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箆柄暦『四月の沖縄』2011 古謝美佐子

2011.04.01
  • インタビュー
箆柄暦『四月の沖縄』2011 古謝美佐子

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箆柄暦『四月の沖縄』2011
2011年3月31日発行/096号

《Piratsuka Special》
古謝美佐子
「日々是好日(ひびこれいいひ)」

 

Piratsuka Special
古謝美佐子
人の心に寄り添う、情け深い歌声。

 沖縄民謡歌手として、また、夏川りみをはじめ多くの女性歌手にカバーされた子守唄「童神」のオリジナルシンガーとして、県内外の幅広い層から支持され、“ミーコ姉々”の愛称で親しまれる古謝美佐子。八十年代後半に坂本龍一のアルバムやツアーに参加、九十年代前半は沖縄ポップスグループ「ネーネーズ」で初代リーダーを務め、その後のソロ活動でも海外アーティストや若手ロックバンドと共演するなど、多彩なフィールドで活躍してきた。

 だが、実はどんな舞台でも、彼女自身の芯にあるものは同じだという。それは一歳半から通い詰めた沖縄芝居小屋で吸収した、昔ながらの沖縄民謡だ。

 「沖縄の民謡は、もともと沖縄芝居の中で歌われていたものが多いんですよ。うちには芝居好きの叔母がいて、毎日近所の芝居小屋に連れてってくれたんです。二才過ぎにはセリフも歌も全部覚えて、客席で大声で唄ったり踊ったりしたもんだから、叔母は小屋の人に“芝居の邪魔だ、あの子はもう連れて来るな”って怒られたらしいさぁ(笑)」

 その後、小学校に上がって本格的に民謡を学び始めるや、才能は一気に開花。沖縄芝居の幕間などに民謡を披露するようになり、九歳でレコードデビュー。以降五十年近く、彼女は現役の民謡歌手として歌い続けてきた。その歌声はどっしりした深みと情けに満ち、聴く人の心に染み通る力を持っている。現在、彼女の音楽活動を公私両面から支えるプロデューサーの佐原一哉は、その魅力を「自然に近い歌であること」と語る。

 「人工的なモノや音楽が多い中で、古謝美佐子の歌は自然と共鳴してるというか、民謡本来の力があって、深い情感も表現できる。これは彼女が沖縄で暮らしてるからだと思うんです。こういう人は都会に住まわせて歌の仕事をさせても、たぶんあまりいいことはない。僕は“沖縄に放牧してる”って言ってるんだけど(笑)、沖縄の空気を吸って、沖縄のものを食べてさえいれば、いい歌を歌えるんじゃないかと思います」

 その言葉通り、今も沖縄を拠点に全国でライブ活動を展開する彼女が、ステージでいつも大切にしているのは「お客さんの顔を見て歌うこと」だ。

 「目の前のお客さんが私の歌を聞いて、喜んだり涙を流してくれるのを見ると、“私の歌がこんなにも心に響いてるんだ”って感じられて、歌によりいっそう気持ちが入るようになるんです。お客さんの表情に刺激されて私の歌が変わっていく、そのつながりを大事にしたいですねぇ」

 そんな彼女のソロツアーが、この春、全国四か所で開催される。ライブでは、東日本大震災支援のチャリティオークションを実施するほか、ニューシングル「日々是好日」の先行販売も行われる予定だ。「一日一日、目の前のことを一生懸命にやる、今この瞬間こそが一番いい日」。

 そんな思いが込められたこの曲は、今、このときだからこそ多くの人の心に寄り添い、力づける一曲となるだろう。
(取材・高橋久未子/撮影・喜瀬守昭)

 

古謝美佐子(こじゃ・みさこ) 1954年嘉手納町生まれ。幼少より沖縄民謡に親しみ、9歳でレコードデビュー。86年から坂本龍一のアルバムやワールドツアーのメンバーに抜擢され注目を集める。90年代前半は初代ネーネーズにリーダーとして参加。95年以降はソロ活動を再開し、沖縄を拠点に全国でライブ活動を展開している。