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箆柄暦『五月の沖縄』2010

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箆柄暦『五月の沖縄』2010
2010年4月30日発行/085号

 

《Piratsuka Special》
松田一利
沖縄民謡のカッコよさを若い世代に伝えたい。

 甘く伸びやかな中にも凛として力強さを感じさせる歌声と、経験に裏打ちされた安定感ある三線テクニック。沖縄民謡界の次世代を担う若手唄者の一人として、ここ数年、着実に活動の幅を広げてきたのがかーずーの愛称で親しまれる松田一利だ。

 彼が最初に沖縄民謡と出会ったのは、地元の北谷町謝苅地区で青年会に入り、エイサーを始めた十六歳のとき。小さい頃から憧れていたエイサー団体の中で、手踊りから小太鼓、大太鼓と順調にステップアップした彼は、二十代前半には全体のまとめ役である地謡(伴奏担当)に昇格。「どうせならどこの青年会よりも上手い地謡になりたい」と考え、謝苅青年会の大先輩でもあるベテラン唄者・松田弘一のもとで民謡を習い始めた。それが彼に歌の道を歩かせるきっかけとなる。

 「実は最初は民謡には興味がなくて(笑)、エイサーでやる曲だけ教わりたかったんです。でも、師匠は昔の民謡しか教えてくれない。不満に思っていたある日、師匠が出演したコンサートを見に行って、そこですごい衝撃を受けました。稽古のときとはぜんぜん違う、プロの唄者としての姿に感動して、俺もこういう大きなステージに立ちたい!と思ったんです」

 プロを目指すと決めた松田は、「まずは現場を見てこい」という師匠のアドバイスに従い、民謡酒場で働き始める。酒場のステージで唄三線の修行を積むうち、北谷町の同級生でもあるよなは徹に誘われ、二〇〇四年、彼のプロデュースしたエイサーアルバム『カチャーシー・ア・ゴーゴー』に参加。そして二〇〇七年にデビューアルバムを発表して以降は、プロの唄者としてライブやイベント、多数のCD制作に携わり、この三月には待望のセカンドアルバム『うたみちあるき』をリリースした。

 今作では、県内屈指のギタリストとしても知られるアコースティックMの知名勝をサウンドプロデューサーに迎え、彼との二人三脚で制作。民謡とオリジナル曲の両方を斬新なバンドサウンドに乗せて歌っているが、そのスタイルを選んだ理由を、松田は「ふだん民謡に接しない人にも、聴きやすい内容にしたかったから」と語る。

 「僕らの世代(三十代)も含めて、沖縄の若い人達は民謡は古くさくて面白くないと思い込んでる。でも、僕も自分で歌って初めて気づいたんですが、沖縄民謡ってメロディも歌詞も、本当に素晴らしいんですよ。三線一本でも、今回みたいなバンド編成でも、どう歌ってもカッコいい。だからこそ奥が深くて、難しいんですけどね。僕がこういうポップなアレンジで歌うことで、若い世代も民謡に興味を持てるきっかけになればいいな、と思っています」

 「これからも沖縄の古い歌をたくさん勉強して、より多くの人に紹介していきたい」と意気込む松田一利。彼の歩く道からどんな歌が発掘されていくのか、今後の活躍が楽しみだ。
(取材・文/高橋久未子 撮影/喜瀬守昭 撮影協力:Bar土)

松田一利(まつだ・かずとし) 1966年、北谷町謝苅生まれ。謝苅青年会でエイサーの地謡を務める傍ら民謡歌手としての活動も始め、2007年に1stアルバム『ディーグニー』をリリース。現在は青年会は卒業し、県内外でライブ活動を行うなど幅広く活動している。Webラジオもhttp://utasha.net/で毎週更新中。

◆松田一利『うたみちあるき』
ツンダミ TEL:098-932-3801 TUNE-6
2,700円 2010/3/4発売
花口説/村遊び/道/心の彩/浜千鳥/チャンミー/あやぐ/てぃんさぐぬ花/旅/トゥータンガーニー/海やから/夢の空