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箆柄暦『十一月の沖縄』2011 普久原恒勇

2011.11.11
  • インタビュー
箆柄暦『十一月の沖縄』2011 普久原恒勇

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箆柄暦「十一月の沖縄」
2011年10月31日発行/103号

《Piratsuka Special》
普久原恒勇

《Piratsuka Topics》
名嘉睦稔アートカレンダー&旧暦フォトカレンダー
ASYLUM(アサイラム)2011〜Sakurazaka Music & Art Weekend〜
沖縄国際アジア音楽祭 musix2012
映画『琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ』
『momoto Vol.8〜特集・那覇〜』
『改訂版・沖縄島うたポップス工工四集』
coco←musika『coco←musika』

 

PiratsukaSpecial
普久原恒勇
時代と世代を超え、歌い継がれる普久原メロディー。


「民衆の琉球国歌」といわれ、沖縄人の魂のよりどころにもなっている名曲「芭蕉布(ばしょうふ)」。昭和四〇〜五〇年代に沖縄で生まれた者のほとんどが、母親が口ずさむのをその腕の中で聞いたであろう「ゆうなの花」や「チョッチョイ子守唄」。今や「唐船ドーイ」と並ぶカチャーシーの大定番「豊年音頭」。民謡酒場に欠かすことのできない「肝ちむがなさ節」や「ヘイ!二才達(にーせーたー)」。旅行者は沖縄滞在中に何度も耳にすることになる「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」。

こうして普久原恒勇が手がけたウタの曲名を挙げれば、彼が沖縄音楽界・戦後最大の作曲家であることに異論を唱える者はいないはずだ。沖縄を知る誰もが郷愁を感じ、島の風景を心に描くその美しい旋律は、“普久原メロディー”の名で人々に愛されている。

さらには、「ちんぬくじゅうしい」や「軽便鉄道節」など、プロデューサーとして作ったヒット曲の数々。沖縄に作詞家を育てるべく結成した「沖縄歌謡詞集団」や、NHK『あたらしい沖縄のうた』、琉球放送『ホームソング』など音楽番組での活躍。島唄の神様・嘉手苅林昌を表舞台へ引き上げ、伝説のガールズグループ・フォーシスターズを導いた手腕。「白浜ブルース」などの“琉球レアグルーヴ”に見る前衛センス。民族楽器による大編成管弦楽、詩曲「響(とよむ)」や史曲「尚円」での器楽曲への挑戦。マルフクレコード二代目として担った「十九の春」や「ハイサイおじさん」の初出。この普久原の偉業は、そのまま戦後の沖縄音楽史に重なる。

普久原の養父は、沖縄音楽初のレーベル、マルフクレコード創業者である普久原朝喜(ちょうき)。沖縄の音楽土壌を培った「近代沖縄音楽の父」だ。それにならえば、普久原恒勇はそこに苗を植え、育てた「沖縄ポップスの父」。彼がいなければ、現在の沖縄音楽シーンの隆盛はなかっただろう。

そんな普久原が今年、作曲家生活五〇周年を迎えた。これを記念して、“普久原メロディー”を聴いて育ち、彼をリスペクトする沖縄ポップスのアーティストたちが、レーベルを越えて大集結。名曲の数々をロック、ジャズ、ボサノバ、レゲエ、テクノなどにカバーし、豪華なトリビュートアルバムを完成させた。これほどの面々が一堂に会するのは画期的だが、それもやはり普久原の偉大さゆえ。そしてその顔ぶれやアレンジの多様性もまた、普久原音楽が持つ普遍的魅力のなせるわざだ。

子や孫の世代によるこのカバーアルバムを、普久原自身はこう語る。
「自分の作ったウタが、時代を超え、世代を超えて歌い継がれていく。それはウタに本当の生命が宿ること。これほど作曲家冥利に尽きることはない」

沖縄音楽の根っこをたどりながら、同時に、その豊かな実りをも味わえる『普久原メロディー』。とても贅沢で、そして、まさに記念碑的なコンピレーションアルバムだ。
(文/コンピレーションアルバム『普久原メロディー』プロデューサー・三枝克之 写真/垂見健吾)

普久原恒勇(ふくはら・つねを) 1932年、大阪・西淀川に生まれる。生後すぐにマルフクレコード創業者・普久原朝喜の養子となり、大阪と沖縄で交互に暮らしながら育つ。大阪で西洋音楽を学び、59年以降、コザで活動。61年の処女作「月眺み」から最新ヒット「森のふくろう」まで、作曲数は400曲以上。

◆アルバム『普久原メロディー』
UNIZON for Tune(TEL:098-989-5148)
UNIZON-001 2,940円
沖縄県内2011/10/26
県外2011/11/2発売
芭蕉布(HY)/うたがうまれる(比嘉栄昇)/ヘイ!二才達(DIAMANTES)/ジントーヨーBLUES(下地勇&内田勘太郎)/島やからー(大山百合香)/チョッチョイ子守唄(Cocco)/泡盛の島(マルチーズロック)/娘ジントーヨー(勢理客オーケストラ feat. 首里フジコ&KINO)/月眺み(メガネストラトス)/interlude(芭蕉布)/ゆうなの花(ヒロヤマな音[ORANGE RANGE])/三月三日(アマナ)/島々清しゃ(比屋定篤子)/南国育ち(TROPICALISM feat. 多和田えみ)/草まくら(jimama)/肝がなさ節(ORIONBEATS[Tetsushi Hiroyama・RYUKYUDISKO] and YAMATO[ORANGE RANGE])/豊年音頭(MONGOL800)