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箆柄暦『五月の沖縄』2014 内里美香

2014.04.30
  • インタビュー
箆柄暦『五月の沖縄』2014 内里美香

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箆柄暦『五月の沖縄』2014
2014年4月30日発行/133号

《Piratsuka Special》
内里美香
『ミカノウタ』

《Piratsuka Topics》
フォーシスターズ in 宜野湾&奈良
阪神梅田店めんそーれ沖縄味と技展
横浜から沖縄の文化を発信する「ウチナー祭」
うたの日コンサート2014
大城クラウディア『いちばん桜〜サキホコル〜』

 

 

《Piratsuka Special》
内里美香
『ミカノウタ』

母から子へ、伝えたい唄がある。

南大東島出身・在住の民謡歌手、内里美香が、この二月、待望のニューアルバム『ミカノウタ』をリリースした。前作『風のションカネー』から約十年。当時の彼女は二十代半ばで、沖縄本島を拠点に全国でもライブを行い、民謡界を代表する若手実力派の一人として、第一線で活躍していた。だが八年前、結婚・出産を機に活動のペースを落とし、二人目出産後の五年前には南大東島にUターン。以降、表舞台に出る機会は激減した。三十代半ばとなった今も、二人の娘の子育てに追われる毎日だが、そんな中で今回思いきって新作の制作に取り組んだのは、「前作から十年という節目に、〝今の自分の唄〟を録っておきたかったから」と微笑む。

「十年前に比べて、私の生活は大きく変わりました。前は唄三線が一番大事で、もっと練習して上手くなることばかり考えていたけど、今は子どもが最優先なので、歌う時間は本当に限られてしまう。最初はそのことにワジワジ(いらいら)もしたけど、次第に〝生活の中に歌がある〟ことに気づいたというか、『できないときはできない。時間があるときに歌えばいいんだ』って、無理なく思えるようになりました。たとえば子どもを寝かしつけるときには子守唄を歌うから、それも練習になるし、とか。以前に比べれば練習時間は減ったけど、むしろ気持ち的には楽になって、自然体で歌えるようになった。それはとても幸せなことだし、そんな今の気持ちを唄にしたかったんです」

そんな彼女の心情の変化は、CDに収録された唄声からもはっきりと伝わってくる。今回は美香の長年の友人でもある唄者、松田一利がプロデュースを手がけたが、彼も「母になって唄に深みと情けが加わった」と絶賛するとおり、しっとりと伸びやかな中にも力強く、落ち着いた色気を漂わせた美声と巧みな歌い回しは、二十代の頃とはまたひと味違った大人の魅力にあふれ、しみじみと聞き手の心に染み入ってくる。特に昔からの民謡を歌う美香の声には、格段の思いが込められているようだ。そのことを聞くと、彼女は「もともと情け唄が好きなのもあるけど、子どもを持って、昔からの民謡をこの子達に伝えていきたい、と考えるようになったのも大きいと思う」と語ってくれた。

「自分が親になって、初めて『民謡界の先輩方も、こういう気持ちで歌い続けてくれてたんだ』って気づいたんです。だから先輩方への恩返しのためにも、今度は自分達が次の世代に唄を残していかなきゃいけない。今、娘達はこのCDを聞いて一緒に歌ってくれるので、それは何より嬉しいことですね。私自身も子育てが一段落したら、また本格的に歌いたいと思っていますが、今はまだ難しいので、当分は先輩方の〝歌は逃げないよ〟って言葉を心の支えに、生活の中で歌い続けていければと思います」

そんなわけで、現役復帰はまだ先になりそうな彼女だが、今月は特別にレコ発ツアーとして、県外と沖縄本島でのライブが予定されている。母になって一回りも二回りも成長した〝ミカノウタ〟を、生で堪能できる貴重なチャンス。CD共々、ぜひお聞き逃しなく。

(取材&文・高橋久未子/撮影:東和明)
取材協力:オフィスキーポイント

 

内里美香(うちざとみか)
1980年南大東島生まれ。民謡好きの両親のもとで唄三線に親しんで育ち、高校1年生で琉球民謡協会コンクール最高賞に合格。高校卒業時にデビューアルバム『たびだち』をリリース。

 

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◆内里美香
『ミカノウタ』

キャンパスレコード TEL:098-932-3801
TUNE-15 2,300円 2/5発売
サーサー節/ナークニー〜ジントーヨー/シューラー節/南洋小唄/さくら/石くびり/秋され/辺戸情話/繁昌節/デンスナー/アバヨーイ

◆内里美香『ミカノウタ』発売記念ツアー
5/13(火)@名古屋・オキナワAサインバーKOZA
5/14(水)@東京・吉祥寺STAR PINE’S CAFE
5/16(金)@大船・花いちぜん(キャンセル待ち受付中)
5/17(土)@北谷・MOD’S