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箆柄暦『十二月の沖縄』2018 BEGINインタビュー

2018.12.01
  • インタビュー
箆柄暦『十二月の沖縄』2018 BEGINインタビュー

《Piratsuka Special Long Interview》

BEGIN
〜思いを込めた大切な曲達を届けます〜

[icon name=”microphone” class=”” unprefixed_class=””] 箆柄暦[紙]の特集に掲載しきれなかったインタビューの全容を一挙公開!

1990年のメジャーデビュー以来、ブルースから島唄まで幅広い音楽性を持つオリジナル曲の数々で、全国的に高い人気と評価を得ている石垣島出身の3人組バンド、BEGIN。デビュー28年目の締めくくりとなる今月、3年ぶりに通算20枚目となるアルバム『Potluck Songs』をリリースする。収録曲はここ3年の間に発表してきた楽曲が中心で、その多くがCMソングや番組テーマソングなどのタイアップ曲だ。メンバーの比嘉栄昇(vo)、島袋優(g)、上地等(key)は、この作品にどんな思いを込めたのか。後半ではデビュー以降28年間の音楽活動も振り返りつつ、それぞれの胸のうちを語ってもらった。

●ポットラック・パーティのような“持ち寄りアルバム”

—-今回の『Potluck Songs』は3年ぶりのニューアルバムになりますが、どのようなきっかけでリリースが決まったのでしょうか。

比嘉栄昇 前作のリリースから3年経つうちに、あまりにも(アルバム化されていない)楽曲が貯まってしまって。中には配信限定の曲や、沖縄限定シングルの曲もあって、そういった曲達も表に出たがってるんじゃないかなあと、いわば親心です(笑)。でも一番は「ファンの方々に新しい音源を届けたい」という気持ちですね。1枚のCDとして届けられれば、ライブでも演奏しやすくなりますし。

—-今作は収録曲の多くがタイアップですが、こういった形のアルバムは、BEGINとしても初めてのリリースだとか。

栄昇 そうですね。でも、みなさん意外に思うかもしれませんが、BEGINはけっこうタイアップの依頼をいただくんですよ(笑)。タイアップの曲作りは大変なことも多いんですけど、どうですか、優さん(笑)。

島袋優 ええ、今もちょっと(曲作りで)苦しんでるところですけれども(笑)。でも、タイアップの依頼があるのは「BEGINカラーの曲が求められてる」ってことですから、それはやっぱり嬉しいですよね。BEGINは今年でデビュー28年目ですが、28年やってくる中で“自分達の音楽”の形を作ってこれたんだな、と思うし。

上地等 もちろん、タイアップではテーマに合わせて曲を書く必要があるし、責任は重いし、大変です。でも「求められたものに近づくように曲を書く」というのは、曲作りの勉強にもなるし、何より「依頼がある」というのはありがたいことです。そのことに感謝しつつ、できるだけ喜んでもらえる曲を書きたいな、と。

—-タイトルを『Potluck Songs』とした理由は?

栄昇 タイアップの曲って毎回、そのCMとかドラマとか映画とかのテーマに合わせて、一生懸命に思いを込めて作るんです。今回はそれらを1枚にまとめたわけですが、ふと「これってポットラック・パーティみたいだな」って思ったんです。ポットラック・パーティって、参加者がそれぞれの得意料理を一品ずつ持ち寄って開く形式のパーティで、ハワイとかでは昔から行われているんですね。僕らも以前、ハワイにライブしに行ったとき参加させてもらったんですが、それがとっても良かったんですよ。会場に並んだ料理から、作り手一人ひとりの思いが伝わってくる感じがしてね。それでこのアルバムも、僕らが思いを込めた曲達を持ち寄ったものだから、タイトルを『ポットラック・ソングス』にしました。僕らの思いを、アルバムにして皆さんにお届けしたいな、と。

その“持ち寄り曲集”には、オリオンビール創業60周年記念のCMソング「ソウセイ」、島ぜんぶでおーきな祭(沖縄国際映画祭)の10周年記念ソング「笑顔のまんま」など、沖縄ではすでにおなじみの曲をはじめ、テレビやラジオ番組のテーマ曲、映画やドラマの主題歌など、多数のタイアップ曲が収録されている。曲調も歌詞のテーマも幅広く、バラエティに富んだ構成でありながら、どの曲にもBEGINならではのキャッチーさや親しみやすさが感じられ、思わず口ずさみたくなること請け合いの一枚に仕上がった。

●たくさんの人々との出会いで曲が生まれた

—-今回、こういった形でタイアップ曲をまとめてみて、どんなふうに感じられましたか?

栄昇 改めて振り返ると、曲作りを通じて本当にいろんな方に出会って、いろんな経験ができたんだなあ、ありがたいなあ、と思います。たとえば「歌に満ち足りた世界」(NHKワールドJAPAN・NHK BSプレミアム「J-MELO」エンディングテーマ)は、ブラジルの打楽器奏者でダンサーでボーカリストで、サンバ史研究家としても第一人者のオズワルディーニョ・ダ・クイッカさんという方が曲を書いてくださってて。僕らはブラジル公演をきっかけにオズワルディーニョさんと知り合って、2014年には僕らが主催する野外音楽フェス「うたの日コンサート」にも出ていただいたんですが、この方はブラジルのサンバ界では人間国宝級というか、大変な重鎮の一人なんですよ。そういう方がBEGINのために曲を書き下ろしてくれたというのは、改めて考えると本当にすごいことだったんだなあ、と。

あと「私の好きな星」は、今年(2018年)のうたの日コンサートに合わせて、出演するフラ団体の方々のために作った曲です。うたの日コンサートには、毎年たくさんのフラ団体が参加してくれてるんですが、みんなで一緒に踊ろうとすると、同じ曲でも団体によって振り付けが違うから、なかなか難しいんですね。それならまったく新しい曲を作って振り付けすれば、みんな一緒に踊れるんじゃない?ってことで、この曲を作りました。ただ、曲自体はコンサートでフラの方々に歌ってもらっただけで、音源としてはきちんと録音していなかったので、皆さんが後から「教室でまた踊りたい」ってなったとき困るだろうし、じゃあ僭越ながらBEGINバージョンで歌わせていただきましょう、ってことで、今回のアルバムに収録しました。

そしてもう一つ、オリオンビールのCMソング「ソウセイ」では、ハワイやブラジルや台湾をはじめ、世界各地の沖縄県人会の方々に本当にお世話になりました。この曲はオリオンビールの創業60周年記念CMソングで、創業者の具志堅宗精さんに捧げた歌なんですが、「60周年だから、三線を60丁使ってレコーディングしたらいいんじゃない? きっと宗精さんも喜ぶんじゃない?」って思って。それで各地の沖縄県人会の方々に頼んで、スマホで三線の演奏を録音して送ってもらって、そのデータをこちらでミックスしたんです。もう、かなり無茶なやり方なんですが(笑)、それが実際にできちゃうってのは、すごい時代ですよね。

等 そういえば沖縄銀行の創立60周年イメージソングの「苗」も、行員の方達に会議室に集まってもらって、コーラス部分を歌ってもらったんだよね。BEGINは「集める」のが好きですねえ(笑)。

優 それを言ったら、島ぜんぶでおーきな祭(沖縄国際映画祭)の10周年記念ソング「笑顔のまんま」もそうでしょ。吉本興業の芸人さん達に参加してもらって録音したわけだから。

—-今回はそういったタイアップ曲が中心ではありますが、優さんと等さんが書き下ろした新曲も1曲ずつ収録されていますね。

優 「久茂地川に陽が昇る」は、自分の今の日常をそのまま書いたら面白いんじゃないかな、と思って作った曲です。もうホントに、ただただ酒を飲んでるってだけの歌なんですけど(笑)、アルバムならそういう「遊び」の曲も入れられるかなと。東京から那覇に引っ越して5年くらい経ちますが、近所の地名を歌にできたってのは、やっぱりアルバムならではって感じがしますね。

等 僕の「君がいて良かった」は、ある意味、初心に返るつもりで書きました。BEGINは1990年にデビューしてるので、再来年の2020年で30周年なんですが、これからそこに向けて活動していくことを考えたとき、自分達の音楽にとっての基本というか、中心にあるものを見直したいなと思ったんです。それは何かといえば、アコースティックでシンプルな、たとえばカントリーのように、すっと心に入ってくる曲なんじゃないかな、と。それで、自分達が素直な気持ちになれるように、という思いで、この曲を書きました。

●28年間、活動を続けてこられた幸せ

—-いま「BEGINは2020年で30周年」のお話が出ましたが、BEGINはデビュー以来ずっと休まずに、音楽活動を継続してきていますよね。これだけ長い間続けてこられた理由は、どのあたりにあると思われますか。

等 たぶん、3人それぞれに(音楽で)やりたいことがたくさんあった、というのと、あとは毎年6月に「うたの日コンサート」という大イベントがあって、それを運営する中でたくさんの人に出会って、いろいろな刺激を受けてきたことも、(バンド活動を続けるうえでは)大きかったんじゃないかと思います。僕らは3人とも「刺激を受けやすいタイプ」だと思うんですよ、いろんな意味で(笑)。

優 あと、自分達には「お手本」がなかった、というのもあるかもしれませんね。俺たちがデビューする前には…というか、デビュー後もそうだったけど、リズム隊(ベースとドラム)がいないバンドって、周りに全然いなかったんです。ボーカル、ギター、ピアノの3人で、どんなふうに音楽を作っていけばいいのか、そのお手本がまったくなかった。自分達には足りないものが多すぎて、それを補充するためにはどうすればいいか、「必要なもの」を自分達で探して、必死に勉強し続けるしかなかったんです。でもだからこそ、28年間休まずにやってこれたのかな、と。その流れの中で「ビギンの島唄」にも自然とたどり着くことができたし、結果として今のBEGINという形ができてきたわけですから。

栄昇 でも何より一番大きいのは、やっぱり28年間、全国に「BEGINを待っていてくれるファンの方々が居続けたこと」じゃないでしょうか。本当に、こんなに幸せなバンドはいないと思います。僕らは28年前にデビューしてからずっと、「自分達でライブをしに行く」というよりは、いろいろなところから「ライブに来てください」って呼んでもらって、活動を続けてきたんです。だから正直「なんで28年続いたのか」って、考えたことなかった(笑)。行くべき場所がある、やるべきことがある、その繰り返しで音楽をやってこれた。これはもう、本当にありがたいことだと思います。

3人が語るように、たくさんの出会いや経験の積み重ねから生まれたニューアルバム『Potluck Songs』。持ち寄られた一曲一曲には、メンバー一人ひとりのひとかたならぬ思いが込められている。この新作を携えて、年明けからは全国ツアーをスタートさせるBEGIN。2020年のデビュー30周年に向け、今後も走り続ける彼らの活躍に、乞うご期待!(文・高橋久未子)

BEGIN(びぎん)

石垣島出身の同級生である比嘉栄昇(vo)、島袋優(g)、上地等(key)が結成した3人組バンド。1990年にシングル「恋しくて」でメジャーデビュー。毎年6月には、沖縄県内で「うたの日コンサート」を開催している。

オフィシャルサイト https://www.begin1990.com/

[CD Info]
BEGIN『Potluck Songs』
インペリアルレコード
TECI-1606
2,593円(税別)
2018/12/12発売

苗(沖縄銀行創立60周年イメージソング)/バンドを組もうよ(NHKラジオ深夜便「深夜便のうた」8~9月)/飛んで火に入る腹の虫(NHK BSプレミアム ドラマ×マンガ「戦争めし」エンディング・テーマ)/君の歌はワルツ(映画「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」主題歌)/網にも掛からん別れ話 with 京都市交響楽団(東海テレビ・フジテレビ系全国ネット オトナの土ドラ「とげ」主題歌)/久茂地川に陽が昇る/君がいて良かった/私の好きな星(うたの日2018~フラ テーマ・ソング~)/歌に満ち足りた世界(NHKワールドJAPAN・NHK BSプレミアム「J-MELO」エンディングテーマ)/笑顔のまんま マルシャ ショーラ・フル・バージョン(島ぜんぶでおーきな祭 沖縄国際映画祭 10周年記念ソング)/ソウセイ(オリオンビール創立60周年記念CMソング)

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◆第23回 BEGINコンサートツアー2019
※時刻は開場時間/開演時間

1/14(月祝)17:45/18:30@神戸・神戸国際会館こくさいホール
1/26(土)16:45/17:30@富山・黒部市国際文化センターコラーレ
1/27(日)16:15/17:00@長野・長野県ホクト文化ホール
2/2(土)16:45/17:30@北海道・札幌わくわくホリデーホール
2/7(木)17:45/18:30@宮崎・日向市文化交流センター
2/9(土)16:45/17:30@熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール
2/10(日)16:45/17:30@福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2/16(土)16:45/17:30@愛知・日本陶業市民会館
2/24(日)16:15/17:00@東京・中野サンプラザ
3/3(日)16:15/17:00@奈良・なら100年会館大ホール
3/4(月)17:45/18:30@兵庫・尼崎市総合文化センター
3/8(金)17:45/18:30@岡山・岡山市民会館
3/10(日)16:15/17:00@愛媛・西条市総合文化会館
3/24(日)16:00/17:00@大阪・大阪フェスティバルホール
3/28(木)17:45/18:30@秋田・由利本荘市文化交流館
3/30(土)16:45/17:30@宮城・仙台電力ホール
3/31(日)16:15/17:00@福島・いわき芸術文化交流館アリオス

前売料金:高校生以上6,500円/小中学生2,000円/未就学児膝上無料

詳細はBEGINオフィシャルサイトへ
https://www.begin1990.com/