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箆柄暦『三月の沖縄』2019 むぎ(猫)

2019.02.25
  • インタビュー
箆柄暦『三月の沖縄』2019 むぎ(猫)

《Piratsuka Special Interview》

むぎ(猫)
~歌って踊って演奏する猫、沖縄から全国デビュー!~

「芸能の島」として知られ、日本の音楽シーンにも数多の人気アーティストを送り出してきた沖縄。その沖縄からこの春、また新たな才能が全国デビューする。その名も「むぎ(猫)」(読み:むぎかっこねこ)。見ての通り、そして名前の通り、猫である。猫なのだが、ただの猫ではない。オリジナル曲を作ってステージに立ち、歌って踊っておしゃべりして、さらには華麗なバチさばきで木琴を演奏したりもする、人間顔負けのエンターテイナーなのだ。

実はこのむぎ(猫)、もともとはごく普通の飼い猫だった。沖縄出身の“カイヌシのゆうさくちゃん”と東京で出会い、カイヌシの帰沖に伴って沖縄に移住。10年前に12歳で永眠した後は、天国でのんびりと暮らしていた。だが、むぎを愛するカイヌシが、むぎの生き返りを願って手作りの“新しいカラダ”を用意したことから、5年前にこの世に生還。カイヌシとともに二度目の猫生を送る中、たまたま招かれた猫関連イベントで、ライブに挑戦してみたところ大ウケ。それを機に、本格的に音楽活動を開始したのである。

というわけで、まずは天国から帰ってきて音楽活動を始めるまでの経緯を、むぎ(猫)本人…ならぬ本猫に、聞いてみよう。

—-むぎ(猫)ちゃんは、ちょうど5年前(2014年3月)に天国から戻ってきたんですよね。最初から音楽をやりたいと思っていたんですか?

むぎ(猫) いいえ、最初は特に音楽をやるつもりはなかったんです。この世に戻ったばかりの頃は、那覇の国際通りとか、北谷町美浜のアメリカンビレッジとかでお散歩するだけで満足してました。それで、SNSで「今日はここで散歩します」とか「握手します」とか呟いてたら、あるとき猫関連のイベントに呼ばれまして。せっかく呼んでもらったのに、ただ立ってるわけにもいかないから「僕にできることを何かしないと」と思って、SNSでみんなに「むぎ(猫)に何をしてほしいですか」って聞いたんです。ライブ、人形劇、お絵かきなど、いろいろ選択肢を用意したら、それぞれに票が集まったから、「じゃあ全部やります」と。

で、そのイベントに向けて曲も作って、当日はカバー曲も含めて8曲くらい用意して、歌ったり踊ったり演奏したり、音楽に合わせて絵を描いたりしました。そうしたら、観た人がすごい喜んでくれたんです。僕自身もすごく楽しかったし、もっとライブをやって、もっとニンゲンの皆さんに喜んでもらいたい!と思って、本格的に音楽活動を始めました。

—-むぎ(猫)ちゃんのライブは、単に歌を歌うだけじゃなくて、曲に合わせて踊ったり、ぬいぐるみと会話したり、紙芝居を組み合わせたり、エンタメ要素がてんこ盛りですよね。

むぎ(猫) はい、僕のライブはコンサートというよりは「ショー」なので。そもそも、僕がこの姿でただ立って歌ってるだけじゃ、あんまり面白くないでしょ(笑)。ミュージカルみたいに、劇と音楽を組み合わせたステージにすれば、お客さんも飽きずに見られるし、年齢も関係なく、誰にでも楽しんでもらえると思ったんです。むぎ(猫)のショーは大人向けでも子ども向けでもない、ニンゲンはもちろん動物も楽しめる“みんな向け”のショーなんです!

もちろん「コンサートではなくショー」だからといって、「音楽そのもの」が二の次になっているということでは、まったくない。そこがまた、むぎ(猫)のスゴイところだ。猫の視点で綴られた、優しくコミカルでちょっとシュールな歌詞は、少年のような無邪気さとそれゆえのシニカルさ、命あるものへの深い愛情を併せ持ち、ポップでキャッチーなメロディと相まって、聴き手のココロに強いインパクトを残していく。宅録(自宅録音)で丁寧に作り込まれたサウンドは、ポップスにロック、ラテンにヒップホップにテクノに音頭と、音楽のジャンルも幅広く、とても猫とは思えないクオリティの高さである。

そんな「猫らしからぬ」ステージは回を重ねるごとに評判を呼び、むぎ(猫)は猫関連のイベントにとどまらず、さまざまなライブや音楽フェスに出演するようになる。2017年には、自主製作で1stアルバム『天国かもしれない』をリリースしたのに続き、日本最大級の野外音楽フェス「フジロックフェスティバル」にも出演。音楽ファンの間で大きな話題を呼んだ。

その後も県内外で多数のライブ出演を経て、いよいよ2019年3月、メジャーデビューアルバム『君に会いに』が全国リリースされる。奇しくもこの月は、むぎ(猫)が天国から帰ってきてちょうど5年という節目のタイミング。沖縄の猫界から日本の音楽シーンへ、初のメジャーアーティストの誕生である。

—-今回のアルバム『君に会いに』は、どのような形で制作したんですか?

むぎ(猫) 今回も前作と同じく、むぎのおうちで録りました。ピアノや木琴やドラムの生演奏も、打ち込みも、全部むぎとカイヌシの共同作業で録音しています。ただ、ギターだけはむぎもカイヌシもあんまり得意じゃないので、友達のアラカキサトシ君にお願いして、2曲弾いてもらいました。

—-作詞作曲も、ぜんぶむぎ(猫)ちゃんが担当していますよね。曲作りはどうやっているんですか?

むぎ(猫) むぎの場合は、言葉とメロディが一緒に出てくることがほとんどです。散歩してるときとかにふと思いついたフレーズを、その場でボイスレコーダーで録っておいて、あとでそれらをつなげていく、って感じが多いですね。あとは、リズムトラックを打ち込んで遊んでるうちに、言葉が浮かんできて曲になったりとか。ピアノやパソコンに向かって「よし、集中して曲を作るぞ」ってことは、あんまりないです。

—-では、今回の収録曲のラインナップは?

むぎ(猫) これまでライブで演奏する中で作ってきたものと、テレビや映画のテーマ曲として作ったもの、そして今回のアルバム用に書き下ろしたものをまとめた感じです。

前作は「むぎ(猫)」がどんな猫なのかをわかってもらうための、自己紹介的な曲が多かったんですが、今回はそういう説明的な部分はもう省いてもいいかな、と思って、純粋に音楽として自分が作りたい曲、ライブで楽しんでもらえる曲を作ることに集中しました。その結果、音楽的にもグレードアップしたというか、自分自身ミュージシャンとして成長できたと思うし、とっても満足しています。

—-その中で今作のテーマになっているのが、タイトル曲の「君に会いに」ですね。

むぎ(猫) はい、そうです。今回はメジャーレーベルからの全国リリースなので、このアルバムをきっかけに、むぎのことを知ってくれる人もたくさん出てくるだろうな、と。そういうまだ見ぬ方々に、音楽を通じて「会いに行く」っていう思いを込めました。

ただ、僕は新しいファンの方だけでなく、以前からむぎを知ってくれているファンの方々にも、これを機にまた新しい気持ちで会いに行きたい、と思っているんです。猫でもニンゲンでも、身体は日々年老いていくけど、気持ちは毎日新しくなっていくじゃないですか。その「新しいみんな」に「新しいむぎ」が会いに行くよ、という意味も込めています。新しくなったお互いが会って、青春しましょう!って歌です。

いずれにしても、むぎの活動はやっぱりライブがメインだと思ってるので、CDからむぎを知った方にもいつかライブに足を運んでもらって、直接むぎに会いに来てほしいな、という気持ちがありますね。

—-先に「むぎ(猫)のライブはコンサートではなくてショー」とのことでしたが、理想とするショーの形はありますか?

むぎ(猫) うーん、言葉にするのは難しいんですけど、むぎのライブではいつも“ここでしか観れないファンタジー”を提供できたらと思ってるんです。たとえばサーカスとかマジックみたいに、ステージが終わったら消えてしまうような、儚いけど夢のように美しい体験ってあるでしょう。それと同じように、観た方が「今日はいいものを見たな」って満足して、大事な思い出としてずっと心にしまっておきたくなるような、そんな“宝物の時間”が作れたらと思っています。

—-むぎ(猫)ちゃんは2017年のフジロックをはじめとして、音楽フェスにもたくさん出演していますよね。その経験が、音楽活動に反映されていることってありますか?

むぎ(猫) あります、あります。たとえば今回の収録曲に「流れ星」っていう曲があるんですが、これはフェスに出たとき、他のアーティストのステージを観て、「僕もタオルを振り回せる曲がほしいな」と思って作ったんです。ちょっとジャパレゲ…にはなれてない感じもしますけど(笑)、みんなで盛り上がるための曲です。

—-今後はメジャーデビューを果たしたことで、より大きなステージに出演する可能性もありますね。

むぎ(猫) そうですね。メジャーデビューについては、あまりプレッシャーは感じないように、柔軟に行こうとは思ってるんですけど、やっぱりステージが大きくなってくると「しっかりしなきゃ」とは思いますね(笑)。ただ、基本的には、むぎはむぎの面白さを追求していけばいいのかな、と思っていて。自分自身が納得できるものを作って、楽しくライブができて、それを観てくれる方も楽しい、というステージをやっていきたいです。

僕、いつも「目標」は立ててないんですよ。今までずっと、向こうから目標がやってきて、それをクリアしたらまた次の目標が来る…ってことの繰り返しだったので。思いもよらず天国から帰ってきて、思いもよらずライブを始めて、思いもよらず東京の事務所と契約が決まって、フジロックにも出て、メジャーデビューして…って、ずっといい波に乗れて来られた気がしてて。だからこれからも具体的な目標を立てるよりは、いい音楽を作り続けることで、いい流れを選んでいけたらと思っています。

—-CDリリース後は、初の全国ツアーも控えていますね。

むぎ(猫) はい、ツアーもすごく楽しみです。たぶん、このツアーでむぎと初めて会う方もたくさんいると思うので、その方達はもちろん、以前からのファンの方達にも楽しんでもらえるような、盛りだくさんのステージにできたらと思っています。むぎのライブは「誰がいつ見ても面白い、どこを切り取っても楽しい」ものにしたいので、映像も組み合わせたりとか、いろんな仕掛けを考えています。この機会にCDもライブも、たくさんの方に届いてほしいです!

むぎ(猫)が全国の“君に会いに”行くツアーは、6/20(木)の名古屋を皮切りに、東京、広島、福岡、仙台、札幌、京都、大阪、そして7/28(日)の沖縄と、全国9カ所を回る旅になっている。歌って踊って演奏する猫界のエンターテイナーに、さあ、君も会いに行こう!(文・高橋久未子)

むぎ(猫)(よみ:むぎかっこねこ)

1997年東京生まれ。2002年に沖縄に移り住み、2009年に永眠。5年間の天国暮らしの後、2014年3月にこの世に戻って音楽活動を始める。2017年6月に自主制作アルバム『天国かもしれない』をリリース。現在、沖縄県内外でライブ活動を展開中。
公式サイト https://www.mugithecat.com/

[CD Info]

むぎ(猫)『君に会いに』
SPEEDSTAR RECORDS
DVD付初回盤 VIZL-1547 3,500円(税別)
通常盤 VICL-65132 2,500円(税別)
2019/3/20発売&配信開始

木の下で -instrumental-/君に会いに/猫と学校/夢から醒めた夢/無視できない虫/ギフテッド/CとDと/るすばん天国/四輪駆動の飛び出し坊や/流れ星/ちいさなうた/小さな庭 -instrumental-

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[Live Info]
◆むぎ(猫)TOUR~君に会いに~
6/20(木)名古屋・得三
6/23(日)東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
7/6(土)広島・HIROSHIMA BACK BEAT
7/7(日)福岡・ROOMS
7/10(水)仙台・darwin
7/12(金)札幌・札幌市民交流プラザ クリエイティブスタジオ
7/20(土)京都・磔磔
7/21(日)大阪・JANUS
7/28(日)那覇・桜坂劇場ホールA

※詳細はむぎ(猫)公式サイト https://www.mugithecat.com/ 参照