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箆柄暦『五月の沖縄』2012


箆柄暦『五月の沖縄』
2012年4月30日発行/109号

《Piratsuka Special》
OKI meets 大城美佐子
創刊九周年

《Piratsuka Topics》
よなは徹カチャーシーアルバム工工四付き
横浜沖縄産業発展祭「ウチナー祭」
琉球フェスティバル東京
上間綾乃『唄者』
大城クラウディア「幸せゆき」
伊禮俊一『風の彼方』
めかる『つながり』
宮城善光『BEST SONGS』
ma-yun『謡』

 

 
Piratsuka Special
OKI meets 大城美佐子
北の男が、南の女に恋をした。

 南の島・沖縄で若い頃から民謡を学び、七六歳の今も沖縄民謡界の第一線で活躍するベテラン唄者・大城美佐子と、北の大地にアサンカラ(旭川)アイヌの血を引く者として生まれ、カラフト・アイヌの伝統弦楽器“トンコリ”を手に、アイヌの伝統音楽を軸とする斬新な音楽を生み出してきたミュージシャン&プロデューサー、OKI。日本の端と端で、自身のルーツとなる音楽に取り組んできた二人が、このたび一枚の共作アルバムをリリースした。タイトルは『北と南』。アーティスト名義は「OKI meets 大城美佐子」。そう、これは北の男が南の女に出会い、その唄声に惚れ込んで生まれたコラボアルバムなのだ。今回、この“遠距離”共演に挑んだ理由について、OKIは「大城さんとなら、末永く愛されるアルバムが作れると思った」と語る。

「大城さんの唄声には天女のような魅力があるし、何より沖縄民謡で一番大事な“歌心”を、ずっとブレずに持ち続けているのが素晴らしい。三線のリズムもとても良いので、ひたすら大城さんの唄三線を引き立てるアレンジを考えました」

 ただ、彼自身も沖縄民謡と正面から向き合うのはこれが初めての経験で、最初は沖縄で録った大城の唄三線を聞きながら、「どうすればこの複雑な旋律と、五音しかないトンコリの音が浸透し合うのか」と悩んだという。「そもそも沖縄民謡の旋律は切れ目がなくて、構造がわかりにくい。大城さんに『この旋律はどうなってるんですか』と聞いても、『慣れればわかるから』って言われるし(笑)。でも確かにその通りで、唄三線を何十回、何百回と聞くうちに、民謡のルールがだんだんわかってきて、アレンジが磨かれていった。沖縄で録った声を外気温マイナス二五度の北海道で聞きながら(笑)、プロデュースする喜びを味わいました」

 そうしてできたアルバムは、凛としつつもキュートな色気を含んだ大城の唄三線に、プリミティヴで幻想的なトンコリの音色が寄り添い、それらを浮遊感漂うサウンドが包み込むという、かつてないユニークな切り口の作品となった。その音を通して見えてくるのは、なぜか沖縄でも北海道でもない、それでいてどこか懐かしい、心地よく広々とした風景だ。完成作を聞いた大城も「これは面白いなと思った」と語り、「面白くできたのは、OKIさんだから。わざわざ沖縄に来て“一緒にやりたい”と言ってくれた、その情熱に押されて私も唄三線をがんばった。音楽は“思い”があってこそですからね」と微笑んだ。

 そしてOKI自身にとっても、本作は重要な意味を持つものになったという。「震災後の日本で、僕らの心や価値観は揺らいでいるけれど、一曲目の『固み節』で大城さんが歌っているように、変わらない大切なものが確かにある、それをしっかり出したかった。震災後初となる作品を、こうして大城さんと一緒に作れて、本当に良かったと思う」

 北の男と南の女が心を通わせ、“思い”を込めて作ったアルバム。民謡ファンのみならず、すべての音楽ファンに聞いてほしい一枚だ。
(取材&文・高橋久未子/撮影・仁礼博)

 
OKI(おき) アサンカラ(旭川)アイヌの血を引くミュージシャン/プロデューサーで、カラフト・アイヌの伝統弦楽器「トンコリ」の奏者。アイヌの伝統音楽を軸に独自の音楽スタイルを確立し、国内外で高い評価を得ている。

大城美佐子(おおしろ・みさこ) 1936年大阪市大正区生まれ。名護市辺野古で育つ。知名定繁に師事して民謡を学び、ソロ活動のほか故・嘉手苅林昌の相方も務めた。現在は那覇市内に自身の店「島思い」を構え、演奏活動や後進の指導に取り組んでいる。

◆OKI meets 大城美佐子
『北と南』
タフビーツ(TEL:03-5773-9838)UBCA-1026
2,800円 2012/3/14発売
固み節/恋語れ/北と南/南洋浜千鳥/ヨー加那よー/レッドおじさん/ランク節/ヒンスー尾類小/ヤッチャー小〜泊高橋/南と北